遺言書というと、登記された建物をそのまま特定の人に相続させる内容が一般的です。
しかし、実際には次のような少し特殊なケースについても遺言で残すことができます。

1.未登記の建物を相続させる場合

① 法律上の原則
・建物の所有権を取得した場合は、取得日から1か月以内に「表題登記」を行う義務があります。
② 現実の状況
・現金で建物を購入した場合など、事情により登記がされていない建物も存在します。
③ 遺言での対応
・未登記でも、建物を相続させる旨の遺言は可能。
・建物を特定するために、固定資産税が課せられている場合は、固定資産納税通知書の記載内容を遺言書に書き込むとよい。
④ 注意点
・遺言作成時に登記が可能なら、事前に登記しておくほうが後の手続きがスムーズ。
・未登記の場合、相続人が表題登記から行う必要があるため、時間と手間がかかることがある。

2.建築中の建物を相続させる場合

① 登記上の要件
・建物として登記できるのは、屋根・外壁などが完成して「建物として認められる状態」になってから。
② 相続発生時の問題点
・建築途中で、登記できる状態になっていない場合、遺言での建物特定が不十分と判断される可能性がある。
③ 遺言での対応
・「建物そのもの」ではなく、建築工事請負契約に基づく一切の権利義務を相続させる旨を記載する。
・これにより、未完成の状態でも相続人が工事を引き継ぎ、完成後に所有権を取得できる。
④ 注意点
・建築業者との契約書や工事の進捗記録なども遺言と一緒に保管しておくとよい。