1.再転相続とは

再転相続とは、被相続人が亡くなった後、その相続人も相続の承認や放棄をする前に亡くなった場合に、その亡くなった相続人の相続人が代わりに相続することをいいます。

再転相続を、具体的な事例に基づいて考えてみます。被相続人祖父Aさんが死亡し、父BがAさんの相続人になりましたが、相続の承認・放棄を選択しないまま、祖父A死亡の1カ月後に亡くなりました。父Bの子であるCが、父Bの持っていた相続の承認・放棄を選択する権利を承継し、祖父Aの相続を承認・放棄することを再転相続と言います。

 

 

2.再転相続における相続放棄の注意点

再転相続では、第1次相続の被相続人(祖父A)の相続を放棄するのか、第2次相続の被相続人(父B)の相続を放棄するのか、別々に考える必要があります。両方を放棄することも、どちらか一方だけを放棄することも可能です。ただし、放棄の順番によっては、承認・放棄の選択権を行使することができない場合もありますので、注意が必要です。

具体的な例で考えてみましょう。

<ケース1>

子Cが最初に父Bの相続を放棄した場合には、祖父Aの相続につき、承認・放棄の選択をすることはできません。あくまでも、祖父Aの相続の承認・放棄の選択権は父Bが持っていた権利であり、父Bの相続を放棄すると、子Cにはその権利は承継されないからです。

 

<ケース2>

子Cが最初に父Bの相続を承認した場合には、子Cは、父Bが持つ祖父Aの相続につき承認・放棄を選択する権利を承継しますので、祖父Aの相続につき、承認・放棄の選択権を行使することができます。

 

<ケース3>

子Cが最初に祖父Aの相続を放棄した場合、父Bの相続については、相続の承認・放棄の選択権はあるでしょうか。子Cが父Bの相続を放棄した場合、父の持っていた祖父Aの相続の承認・放棄の選択権まで放棄することになり、最初にした祖父Aの放棄はそもそもできなかったことになってしまわないかとの疑問もありますが、このケースでは、父Bの相続の放棄をすることができます。

 

<ケース4>

ケース3と同様の考え方で、子Cが最初に祖父Aの相続を承認した場合、父Bの相続について相続の放棄をしても、祖父Aの相続の承認が遡って無効になることはありません。

 

3. 再転相続の具体的事例の検討

<祖父Aには借金があり、父Bには借金がないケース>

この場合、祖父Aの相続を放棄し、父Bの相続は承認することで、借金を引き継がず、父Bの財産のみを引き継ぐことが可能になります。この場合順番はどちらでもかまいません(上記ケース2、ケース3に該当)。

<祖父Aには財産があり、父Bには借金があるケース>

この場合、最初に祖父Aの相続を承認して遺産を受け取り、その後に父Bの相続を放棄することで、祖父Aの財産を引き継ぎ、父Bの借金は引き継がないことができます(上記ケース4に該当)。

最初に父Bの相続を放棄した場合には、上記ケース1に該当し、祖父Aの相続につき、承認・放棄の選択をすることはできないため、祖父の財産を引き継ぐことができなくなります。

 

4.手続きの進め方

家庭裁判所へ申立てをしますが、申立先は下記のようになります。

・第1次相続の被相続人(祖父A)の相続を放棄する場合:祖父Aの最後の住所地の家庭裁判所に申立てます。

・第2次相続の被相続人(父B)の相続を放棄する場合:父Bの最後の住所地の家庭裁判所に申立てます。

両方を放棄する場合でも、人ごとに管轄する裁判所は異なりますので、注意が必要です。

申立期限は、どちらの相続を放棄する場合でも、再転相続が発生したことを知った日から3か月以内です。通常は、父Bが亡くなった時から3か月以内となります。

 

 

再転相続がある場合には、非常に複雑なケースが多く、放棄する順番によってはその効果が大きく異なる場合もあります。相続の専門家である司法書士は、お客様のケースごとに最適な方法をご提案することが可能です。第2次相続の被相続人(上記例では父B)が亡くなってから3か月を超えている場合でも、相続放棄をすることができるケースもありますので、ぜひ札幌の司法書士清野紀和へお気軽にご相談ください。