死亡危急時遺言とは何ですか?
臨終の際で、公正証書遺言を作成する時間的余裕がなく、字を書くこともできないため、自筆証書遺言を作成することも難しい場合、もう遺言をする手段はないのでしょうか。このような場合でも、危急時遺言方式という方法があり、遺言をすることができます。普通の様式で遺言を作成することが難しい場合の作成方法のため、簡易な方法によって遺言を作成することができます。
死亡危急時遺言の作成要件について教えてください
1 疾病その他の事由によって死亡の危急が迫っていること
・遺言者が自筆証書遺言や公正証書遺言を作れるようになって6ヶ月が経過した場合には、効力は生じないとされています。
2 証人3人以上が立ち会うこと
・証人には下記の者はなれません。証人になれない者が証人のなかに一人でもいた場合には、遺言は無効になります。
① 未成年者(18歳以上であれば証人になれます)
② 推定相続人及び受遺者 これらの配偶者と直系血族
③ 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
3 遺言者が証人に対して遺言の趣旨を口授すること
4 口授を受けた者がこれを筆記すること
・筆記は手書きでなくてもよく、口授とは違う場所で作成しても問題はありません。
5 各証人がその筆記内容が正確であることを承認し、これに署名押印すること
・遺言者の署名押印は不要
・日付の記載も要件ではない
6 遺言の日から20日以内に証人の一人又は利害関係人が、家庭裁判所に確認を求めること
・確認を求めないと、遺言の効力は生じません。
遺言の確認審判の申立てについて教えてください
死亡危急者遺言は、その性質上、通常の遺言と比べて証明力が低いため、遺言の信頼性を確保するために家庭裁判所で確認を受ける必要があります。
1 申立て手続きについて
・申立人 証人の一人又は相続人や受遺者など遺言について利害関係を有する者
・管轄 遺言者の死亡後…相続開始地(遺言者の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所
遺言者の生存中…遺言者の住所地を管轄する家庭裁判所
・申立期限 遺言の日から20日以内
・必要書類 ①申立書
②遺言者の戸籍又は除籍全部事項証明書
③証人の住民票
④申立人の利害関係を証する資料
⑤遺言書
⑥診断書の写し等遺言者の死亡危急状態を証明する資料
⑦その他、遺言が遺言者の真意に出たものであることを示す資料等(例えば、証人の遺言を口授した状況を撮影した映像資料等)
2 確認の審判について
証人の証言や資料をもとに、次の点を確認します。
・遺言者が死亡の危機に瀕していたか
・遺言は本人の真意に出たものか(心証は確信のレベルまでは求められていない)
・証人の立会等、手続きが適正に行われていたか
まとめ
死亡危急者遺言は、遺言方式としては最終手段であり、適切な手続きを経ることができなければ、遺言が無効になる可能性があります。遺言書を確実に実効性のあるものにするためには、専門家への依頼が望ましいでしょう。また、たとえ死亡危急者遺言を作成した後でも、可能であれば、自筆証書遺言又は公正証書遺言を作成することができないか検討すべきです。